#1


心の王冠* 
           

コトバの切れ端 いくつもつなげて。
ひゃくおくメートルの長い輪をつむごう。

君一人のコトバで足りないのなら、
僕のコトバも君に貸そう。

それでもまだ足りないのなら、
もっとたくさんいるのなら、

今日すれ違った多くの人に、
明日すれ違う多くの人に、
ひとつずつでもコトバを借りて、

そうして大きな輪をつむごう。





『神サマ気分』

あなたに なぞなぞ 出しましょう
うんと ひねった やっかいなのを

遙かなる天の高みから
頭を抱える君のつむじを見下ろして、神サマの気分


ヒントは いくつあげようか

「さあて 答えは 何でしょう?」





なんでもない日

雑踏の中、月を見上げる。
細切れになった空、檻に閉じ込められた月。
電線の向こうの小さな空を、
うつろな表情で、いつもの月がゆく。

 変わらない毎日を嘆くように。
 怠惰な日常を責めるように。


けれど私は認めない。
"今日"が無駄だった日などない。

 ぼんやり過ぎた今日も特別な瞬間。
 明後日には忘れそうな今日でも、特別な瞬間。


だから私は信じよう。


明日のぼるのは新しい月。
その日のためだけの、新品の光。





オセロ

世界はオセロのゲームのように
白か黒かでいつも争う。
白か黒か、黒か白か、君か僕かのふたつに1つ。

世界はオセロの石。
明るい方に倒しても、暗い方に倒しても、
石はそこから動かない。


石をまっすぐに立ててみる。
不安定でもかまわない。
白でも黒でもないオセロの石は、
ゆっくりゆっくり転がっていく。
どこにいくのか判らないけど、
ゆっくりゆっくり、進んでく。

白でもなく黒でもないグレイな世界。
黒でもあり白でもあるグレイな世界。
両方あって、どちらでもない、
引き分けたままのオセロの世界。

対立しない君と僕。


立てた石はゆらゆら揺れて、
危なっかしくもあるけれど、
それでも確かに進んでく。
グレイのままで、先へ先へ。





「鏡の時間」

しとしとしとしと 雨が降る。
ぽたぽたぽたぽた 滴が落ちる。
雨に濡れた葉に映るのは鼠色の雲ばかり。
僕はうす暗い牢獄の気分。

びしょぬれの空に、びしょぬれの町。
びしょぬれの傘からつたった水が、
びしょぬれの道に流れてく。
雨の日の月曜日、憂鬱な月曜日。
止んでも虹すら出やしない。

ぱしゃぱしゃぱしゃぱしゃ アスファルト。
いくつもいくつも 水たまり。
大きな鏡に、小さな鏡、
映るのは鼠色の町ばかり。

僕は重っ苦しい世界の中で、
息を殺して じっと待つ。
雲が切れる瞬間を、
太陽が帰ってくるその時を。


 空に還る一つの太陽、
 無数の鏡が彼を迎える。
 町に還る無限の太陽、
 きらきらきらきら 輝いて。


僕はその時を知っている。
水たまりが鏡になって、
鏡が歌いだす、その時を。

だから僕はじっと待つ。
息を殺して、その瞬間を。





『心を呑んで』

姿のない記憶は雲のように
思い出すたび姿を変える。

悲しかった記憶も
今はあたたかい風に吹かれて
かけがえのない煌めきを
その身に纏う。


思い出は、心に浮かぶ雲。


地球を巡る風におされて
姿うつろう雲のように
触れれば指を切り裂いた、息もできぬほどに渦巻いた記憶も、


いつかは、


呑み込まれ
流されて
全ての大気に消化され

そうして、

胸の内にあって当然の
丸く透きとおった雲になる。





「まどろむ」

くぼんだ掌の上に、陽ざしが溜まる
光の中に、ぐずぐずと輪郭が溶けていく
細胞が私であることをやめていく。

私は部屋の一部になる。
きらきら舞うほこりの一部になる。
色ガラスのような夢を追いながら、
窓の側に寝ころんだ、空気の固まりになる。


唐突にドアが開く。
ひんやりした風と一緒に、
君は部屋に入るだろう。
私は形を取り戻す

君は私を見つけるだろう。
私は私を自覚する

君は私に微笑むだろう。
でもその前に、
私が君に微笑もう

君という幸せにまどろみながら。





英雄

剣を取り、力を奮い、敵を討つのが英雄か。
怒濤の渦の中、名を吼える者のみが英雄か。
答えは否。
では何か。

この渦中に有りて、
ただただ生き延び、

家人の手を引いて、
恐慌はびこる故郷を逃れ、

亡くした者を想って、
ひたすらに泣き、

そしていつかは面を上げて、
道をたどり国に戻り、
血と悲哀のこびりついた土地にクワを入れ、
耕し、
耕し、
耕して、
再び安寧な里を成す。


弱くも強き民人こそが、天の定める勇者なり。





希望の光

叶わない夢を抱く君は
どれほどの哀しみを抱えているのか。
叶わない夢を想うことに、
どれほども価値はないのだろうか。


可能性のあることばかりが
本当の夢ではないはずだから。
可能性のないことだって
本当の夢であるはずだから。


夢に夢を積み重ねて、
この大空に手を伸ばす。
とどかないと分かっていても、
とどいて欲しいとそう願う。


想いが力になるのなら、
いつかは陽の光もこの手に掴める。
そんな気がしてならないなら、
それは君が生きてる証拠。